闇に降る雨
別に望んじゃいないが、政府を守る犬という立場があるのは明確な事実だったりする。
もちろん、そうではなく大半が近藤局長の人柄により付いて来ている者たちばかりだったりするのだが、政府の中枢に根を張っている天人の命により、人を斬らなきゃいけない場合が多々ある。無論、俺はそれは大いに結構、今更人なんて斬れませんぜィなんて言うつもりはさらさらないのだが、実際には人斬りをむやみやたらにしなければいけないという位置に辟易している者も少なからずいる。
だから、俺が前に出る。
「スマートな殺し方じゃねぇなぁ、総悟」
土方さんが瞳孔を開いたままの目で笑った。
殺し方にスマートも糞もあるか。
「なら、土方さん、サボってないでさっさと仕事してくだせェ。副長の癖にえらく気ィ抜きすぎでさァ」
俺の言葉に反応したのか土方さんのこめかみがぴくぴくと動き、額には血管が見え隠れしている。
それを見ながら、血で濡れすぎて切れ味も悪くなった刀を振り血を少しでも落とそうとしてみるが、それも無駄な努力で。でも、こんなことのために紙を使うのももったいない気がした。
「さて、土方さんに邪魔されちまったが、もう一仕事してくるとするとしますかィ」
「なッ、邪魔なんかしてねぇよ!」
「そうゆう無駄口が邪魔なんでさァ」
血管がさらに見え隠れしているが俺はそれを無視して、政府が決め付けた敵に向かっていった。
無論、負ける気はない。
ただ、目の前でひたすら殺しを繰り返すだけだ。
「なァ、総悟」
殺しを済ませて真撰組隊員大抵の者が帰っていった後、土方さんが呟くように俺に話し掛けた。
「なんでさァ。此処で殺して欲しいんなら、喜んで引き受けますぜィ」
「んなわけあるか!」
刀を振って血を取り払おうとしても、それは取り払えるものでもなく。
こびり付いては、まるで呪縛のように蝕む。
「……遊んでないで帰って来いよ」
呟くと、そのまま何処かへ行ってしまった。
近藤さんといい土方さんといい俺の周りにはお人よしばかりがいる。まるで、こんな血にまみれた仕事なんて似合わない人たちが。
こびり付いて落ちようともしない血を紙で拭くのもなんだか躊躇われ、そのまま鞘に収めてしまう。錆びて使えなくなるかも知れないが、ともかく今は紙で血を拭いたくなかった。
「なぁ、」
不意に、近藤さんと土方さんを叩きのめした万事屋にいるチャイナ娘を思い出す。
なぜ、ここで思い出すのかは俺には一向に分からなかったが。
「俺とアンタの違いは一体なんなのでさァ」
それは多分、帰ってくることのない答え。
同族嫌悪とも異なるが、同じ性質の生き物である二人をここまで違う状況へと分けたのは果たして状況だったのか、それとも。
「俺はこの仕事に悔いなんて一つもない」
真撰組が俺の帰っていく場所なのだから。
けれども、生臭い匂いのするその場にいなければいけないのは多分。
「俺も、アンタみたいになりたかった」
チャイナ娘。
>>20041117/20060705
S星の王子にしろ、本編の総悟にしろ、性格は違います。あーあ。
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