誕生




「ほら、ね。やっぱりこうなった」
赤い輝きを放つ“賢者の石”を呆然と見つめる獣神官に声がかかる。
「獣…王、様?僕は―」
「“死”の匂いがする。お前は自分の言った言葉を覚えているわね、ゼロス?
お前はその“呪”に縛られる。わかるでしょう?お前の“滅び”も近いわ。
本当に愚かな子―」
獣王の瞳は哀の色を含んで彼を見つめていた。
「“愚か”…そうですね。僕は“魔”として相応しくない“感情”など持ってしまったから―くっ」
心臓を突き刺す痛烈な痛み。
視界の暗転、遠ざかる音、音。
一人放り込まれる“虚”の海。
溶ける、溶けていく。かつてゼロスであったもの。
溶けて一つに還ろうとした瞬間に…漂っていた一欠片を掬いあげる手があった。
「だけど、そんな“愚かさ”を私は好ましく思うのよ。それは、私を楽しませてくれるから。
もう少し楽しみたいから―こちら側に帰っておいで」
帰っておいで―
力が集約される。
そして新たな“魔”が誕生する。
彼の手には“賢者の石”の填められた杖が大切そうに握られていた。



      >>20050727 愚かな寓話から浮かんだ話を頂いてしまいました!有難う御座います♪



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