正月 in 初詣。




 1月1日元旦。
 とある神社に今年の抱負もこめてお参りに来る人々の中に、彼らは来ていた。
 髪を肩で切りそろえた少女は、ピンク色に艶やかな花柄模様が描かれている着物を着て、栗色の長い髪の少女は空色の蝶々が描かれた着物に身を包んで、その愛らしさにさらに磨きをかけていた。
 その隣で歩いている、銀色の硬質の髪と岩のように硬い肌を持った青年は皮質のジャケットにジーンズといういたって普通な格好をし、長い金色の髪を持った青年は、まるで、七五三で着るような明るい色の着物に身を包んでいた。
 お参りに来ようとする一般客はやはり同じ事を考えるのかまったく後をたたず、1時間強並んで、やっと、お賽銭箱の前に到着した。

「あ〜〜!!なんで、神頼みするために皆神社にきてるのよ!お正月番組でも見なさいっての!!」

「…リナ、お前も神頼みに来たんだろうが」

「あたしは!アメリアに頼まれて来てんの!そう言うゼルだってどうせアメリアの頼みに断りきれなくて、こうやって来てんでしょ!?あんたこうゆう行事嫌いだったもんねぇ」

「う、うるさいッッ!」

「ねぇ〜、リナさんにゼルガディスさん。早くお参りしましょうよ!」

「なんか、後ろの奴らが殺気立ってるぞ?」

 突然、お賽銭箱を前に口論している二人に、後の一般客は早く済ましてしまいたい所為か、じろり、とにらんでいる。
 少女はあははは、と笑って、賽銭箱の前を向いた。

  からぐらゃッッ!

 硬貨が無常にも箱の中に入っていって、栗色の髪の少女は半ば恨めしげに賽銭箱を眺めていた。
 どうやら、このお金の使い道は本望ではなかったようだ。

  がらんがらん、、。

 4人で鐘を鳴らすと、ぱんぱん、と拍手をしてお参りをする。
 ――さて、今年の抱負は?

(今年こそは、ゼルガディスさんといっぱい一緒にいられますように)

(余計な事に巻き込まれませんように。あ、あと盗賊いじめがスムーズに出来ますように。つうか、金払ってんだから叶えなさいよね!)

(皆死なないで、元気に会えますように。それと、もっとリナとらぶらぶに!)

(この体が――って、このサイトでは叶っていたり叶っていなかったりなんでまぁいいか。ともかく、ギャグチックなことはさせないでくれ!)

 ――誰が、誰の願いだかは一発でわかりますね。

 ともかく、4人がお参りを終えて、人ごみの中を歩いていると、緑色のセーターを着た青年と、ライダージャケットを着た少年が目に入った。
 にっこりと微笑む、背の高い緑色のセーターを着た青年のその横に差してある刀を見て、剣使いである硬質の銀の髪を持っている青年はふぅん、と唸る。

「新年のお祝い――ね。まぁ、ボクはこうやってまた無事に旅を続けられる事は喜ばしい事だとは思いますけれど、まさか、シズさんに会うなんて思いませんでした」

「俺もですよ、キノさん。お参りも終えましたし、絵馬でも書きに行きませんか?」

「願いを書くんでしたよね?」

「ええ、そうですよ」

 にっこりと笑うその姿は何処か赤らめいていて、何を考えているのか分からない金色の長髪の青年以外は一体性別はどちらなのだろう、と悩んでいた。
 その奥のほうでは、人々の輪がなくなったその中心で、赤色のチャイナ服を着て赤い傘を差している少女と、どこかの制服なのだろうか?黒色のジャケットを着ている青年がものすごい勢いで金魚掬いを競うようにしていた。
 お碗にこんもりと盛られている、金魚はパタパタと苦しそうで、その金魚屋の店長の表情も金魚のように苦しそうだった。

「本当に銀ちゃん何処行ったネ。こんなうぜー男ともういたくないヨ」

「ほぅ、チャイナ娘勝負を放棄するんですかィ?」

「そんな事一言も言ってないネ!むかつく男だナ、オマエ」

 その、どこか戯れたような真剣なような殺気よりも、さらに膨らんだものを感じて、そっちを振り向くと、薄いピンクに艶やかな赤い花が大きく描かれた金色の髪の女性と、いつもの通り、紺色のどこか台所にいるあの黒いヤツによく似ている、おかっぱ頭の青年がにらみ合っていた。――といっても、女性の一方的なものだったのだが。

「フィ、フィリアとゼロスじゃない!?ちょっと、アメリア!あの二人は誘わなかったの?」

「はい〜。また一緒にさせちゃうと新年の幕開けからにらみ合いになっちゃいますし、フィリアさんを誘うと、絶対ゼロスさんが出現しそうで怖かったんですもん〜」

「――意味はなさなかったようだな」

「ふぇ〜ん」

 遠目で関わらないように見ている4人組を尻目に、その金色の髪の女性とおかっぱ頭の青年はにらみ合っていた。

「こんな場所で会うだなんて奇遇ですねぇ、ゼロス?」

「いやぁ。本当にそうですね」

「魔族である貴方がまさか、か・み・に!頼み事をするだなんて思いませんでしたわ」

「何を言っているんですか、フィリアさん。神社にお参りに来るのは人々が神に今年一年、願い事を立ててそれを達成するように言いに来るためなのですよ?ま、何十億人もいる人々の願いをいちいち叶えていては、一年で終わる訳がありませんからね。ですから、僕も魔族の本願である世界への滅びをさらに誓う事を神に言いに来たわけです」

「くぅぅぅっっ!この魔族〜!!そんなこと、私がぜぇっったいに阻止します!!」

「フィリアさん如きに!僕達の野望など阻止できませんよ」

 はっはっはっは、と笑うおかっぱ頭の青年に拳を作り上げて、怒りをさらに大きくしているようで。
 ほわん、と大きな光の玉が金色の髪の女性の手の平の中にあらわれた。

「今、此処で滅ぼしてあげます!!」

 神聖魔法を唱えるその女性に周りは逃げるように走り出した。
 栗色の髪の少女たちも焦りだす。

「ちょ、ちょっと!逃げるわよ!!」



 1、栗色の髪の少女は、金色の髪の青年の襟を掴むと浮遊で山の頂上のほうに飛び去っていく。

 2、銀色の硬質の髪の青年と、黒髪の少女は共に、浮遊でほとりの池のほうへと飛んでいく。

 3、今まさに神聖魔法を唱えようとその場に留まっている金色の髪の女性と、ただ微笑んでいる青年。

 4、絵馬を書きにお賽銭箱の奥のほうへ向かった緑色のセーターを着た青年と、ライダージャケットを着た少年。

 5、金魚取りに飽きて、さらに勝負しようとしている赤いチャイナ服の少女と何処かの制服を着た青年。

 6、番外編。乗り物は進入禁止ということで入り口付近の駐車場で待っているモトラドと、自主的に待っている白い犬。



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