think was cremated.




 青年は一匹の犬と一人の少女と共に、バギーに乗っていた。
 広がる青々とした野原につけられた道を辿りながらバギーを走らせていると、赤い花が広がる大きな花畑が広がっていた。

「すごいな……」

 呟くと青年はバギーのブレーキを踏んで止めた。
 その行動を一緒に乗っていた白い犬はいぶかしげに思い、青年を見た。けれども、その視線に気が付いた青年は笑った。

「美しい景色を楽しむのも旅人の特権さ」

 そう言うと、無表情で見ている少女に微笑みかけ、バギーを降りた。
 一面に赤い花が広がって、風になびいていた。

「まるで、燃える火の様だ」

 呟いた青年に、少女は黙ったまま袖をくいくいと引っ張った。
 それにつられる様に少女のほうを見た青年は、にこりと笑った。

「此花は×××××さ」

 花を踏み分け潰れるのも気にせずに中心に来て、青年は一輪の花を見た。

「………、………………、……、……………、………」

 何かを囁かれたような気がして空を見たけれど、空はただ青いだけだった。
 そうして、青年は柔和な笑みを浮かべた。
 手の中をするりと抜けてただひた走っていく、強き少女を思い出して。

「君達ならば、この思いを花葬してくれるのだろうか」

 呟いても、胸の奥の奥で緩やかにそして、激しく燃え上がっていく炎は勢いを無くすことも知らずに。
 また、同じ世界で会うことが出来るのかも分からない少女の面影を見ているような気がして、青年は自嘲した。
 ふと青年が視線を移すと、赤い花を静かに見ている旅の連れとなった少女と、その隣で眠っているように座っている白い犬が見えて、青年はその頬を緩めた。
 そうして、ゆっくりと寝転んだ。

「君がいない世界でも」

 歪んで軋みながらも動いていく世界は、醜く美しい。
 何処までも対称的な二つのその言葉は何処までも一緒なのだから。
 青年は×××××を一つもぎ取り翳した。
 太陽の光を受け取り薄く象る×××××は儚く思えた。けれども、手の中に確かに感じた。

「確かに時は進んでいくのさ」

 そうして、花を齧った。
 赤いその花びらは引きちぎられ、口の中に含まれて消えていく。

「例え、どんなものが無くなっていこうとも」

 青年は上半身を起こすと、ポケットにしまったくしゃくしゃの紙を取り出して、びりびりと破くとちぎって命をとったその花と共に風に流した。
 燃えるようになびく花に包まれてまるで、火葬されていくようだった。
 けれども思い出までは消えることもなく、青年の心の中に存在し続けた。
 その思いは、諦念という膜に包まれていてもあるいは。

「この花びらが炎になって俺の中のものを燃やしてくれればいいのに」

 そうすれば苦しむことも、その胸の軋みに蹲ることも恐らく無いのに。
 けれど花は花のままで。
 決して、花が炎になるわけも無く。本質的なものなど何も変わりはしないのだということを青年は知っていた。
 風がなびいて、花はさらに深く深く燃える。

「燃やしてくれればいいのに」

 それでも、ただ咲くことが本質な花は決して炎にはならずに、青年の願いを聞き届けることもしなかったけれど。

 さらさらさらさら。

『ただ願っていて』

         『ただ願っていて』

   『諦めることもせずに』

     『泣くことを躊躇わずに』

  『ただ願っていて』

 『見ゆる事で花開くのだから』

          『差し伸べることで花開くのだから』

 さらさらさら。
 音が重なって、声が重なって聞こえたような気がした。
 それはまるで、青年が想う少女の歌のようだった。

「…燃やしてくれれば、いいのに」

 そう呟いても×××××に願っても、叶えてくれる筈も無く。

「シズ様、まだ出発はされませんか?」

「ああ、もう少しだけ。少ししたらあの森の中へ行こう」

 風がなびいて、飛ばしたはずの紙切れは何時の間にか消えてなくなっていた。



      >>20051203 うーん、情緒文ですね。題名合っているのかはわかりません(汗)。



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