慣れ始めた擬似家族。




 私はセイルーン城に勤め始めて二年になる新米侍従です。
 名前……ですか? いえいえ、まだまだ未熟者である私に名乗る名はありません。
 私共の仕事はこのセイルーン城内の雑務および、ここに住まわれている王家の皆様の身の回りの世話をすることなのですが、私はその中でも第二王女であらせられるアメリア=ウィル=テスラ=セイルーン様の身の回りの世話を命じられています。
 王族の方々に仕えるのは私共侍従の中でも名誉であり誰もが憧れる仕事であるというのに、まだ二年の経験しか積んでいない私がこのような大役を命じられ、恐れ多くも嬉しく先輩方から日々教育を受けながらアメリア様に仕えています。
 アメリア様は聡明で美しく凛となされていて、しかし私共のようなものにまで常日頃気にかけてくださる優しい方です。
 そして、常に忙しい方でもあります。
 父上であるフィリオネル殿下をサポートなさり自身も国民を思い様々な構想を打ち出してはトップとしての処理に追われ、息つく暇もなく事務業務をこなし精力的に城下町へ行き国民の声に耳を傾けております。
 以前、未熟な私でありますが恐れながらアメリア様の全身をマッサージさせていただいた時、全身の筋肉がかちこちになっており解すのが大変だった覚えがあります。
 そんな忙しいアメリア様でありますが、王族としての業務以外でお会いになれる方がいらっしゃいます。
 まずは父上であらせられるフィリオネル様。
 そして、彼女のお子であらせられるアズリエル様。
 特にアズリエル様はまだ親の手が必要な子供。アメリア様はいつも一緒に居れないことを悔いていらっしゃるのか、時間を見つけてはアズリエル様の元へ行こうとします。そんなアメリア様はいつも母親失格だわ、と苦笑していらっしゃいますが、私から見ればアメリア様ほど親として立派な方はいらっしゃらないと思います。時間は作ろうと思わなければ作れないものなのですから。
 そして、つい最近なのですがお二人のほかにもう一方アメリア様が業務以外でお会いになられる方が増えました。
 その方はアメリア様のご友人だという、ゼルガディス=グレイワーズ様。
 何でも、アメリア様が諸外国を旅なされていた時一緒に旅をしていらっしゃった仲間なのだそうです。ゼルガディス様がなぜセイルーン城に住み始めたのか経緯は存じ上げませんが、なんでもこの世界を全て見て回ったそうで私などより遥かに様々な知識を持っており、それを生かして時折アメリア様の仕事を手伝っていらっしゃるようです。
 それ以外はアズリエル様と遊んでいらっしゃったり、天気のよい日は中庭で本を読んでいるようで姿を時折お見かけいたします。
 ゼルガディス様がいらっしゃってからというもの、凛として――言い方を変えれば肩を張って常に緊張を強いられていたアメリア様の表情が柔らかくなりました。
 それは、常日頃アメリア様ご自身の幸福を願っている私共侍従からしてみれば喜ばしい変化で――、ゼルガディス様には感謝してもしきれません。
 実のところ、私はゼルガディス様こそアズリエル様のお父上だと思っているのですが、それは流石に考えすぎというものでしょうか。
 さて、私のお話もこの辺りで終わりにしましょう。
 主役はあくまでもアメリア様なのですし、アメリア様を見つけることが出来ましたので。
 仕事の話で彼女を見つけて欲しいとのことだったのですが――、ゼルガディス様やアズリエル様と話していらっしゃるアメリア様の姿を見てしまうと、そこに割り込むのは申し訳なくなってしまいます。
 あまりにもその風景が、幸福そのものなので。

「あら、どうしたの?」

 しかし、アメリア様は私の姿を見つけてしまい、私は申し訳なく思いながら大臣がアメリア様を探しているところをお伝えしました。
 そんな私にアメリア様は、ご苦労様と笑顔を向けてくださいます。

「仕事が入ったようなので、行きますね。ゼルガディスさんとアズはそのままで遊んでいてください」

 そうしてお二人に微笑む姿は本当にきらきらと輝いていて――。

「なんだか、本当の家族のようですわ」

 思わず呟くと、アメリア様は驚いた表情で私を見てとても素敵な笑顔を向けてくださいました。



      >>20080207 ううう、更新がぁ。



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