03 魔道書




 私が人の声を聞きつけて、正義の炎を燃やし聞こえた方向へ行ってみました。けれどもなにもなくて、ゼルガディスさんはあきれかえったような表情をするし…正義じゃありません!とりあえず、人を探してみました。
 近くを探してうろうろしていたら、場所が分からなくなりました。

「…ゼルガディスさ〜ん」

 涙声であるのを自覚しながらゼルガディスさんを見上げると、あきれ返った表情をして、はぁ、と息を吐きました。ううう、いつものことだけど、嫌です!

「猪突猛進すぎるのもどうかと思うぞ。…んな表情するのなら、もう突っ走るのは止めてくれ…」

 それは出来ません!人の悲鳴を聞いて駆けつけないヒーローが何処にいますか!?何処にもいません。正義伝承歌の英雄たちはどこからともなく現れて人を助けていくものなのです。特に悪者に捕らえられたお姫様とか…。
 っとと、思考がそれてしまいました。私はゼルガディスさんの台詞を無視する方向で決定し、前を見ました。すると、ぽかん、と洞窟らしき穴があいていました。

「ゼルガディスさん、なんでしょう?これ」

 そう言うと、ゼルガディスさんは不思議そうな顔をしました。街の図書館や、遺跡、洞窟類についてきちんと調べているゼルガディスさんならわかると思ったのですが…。

「聞いたことが無いな」

「じゃあ、入りましょう!」

「なんでいきなりそうなる!」

 ゼルガディスさんにつっこまれてびっくりしました。こういうの一番調べたがるのは、ゼルガディスさんだとばかり思っていたのに…。
 ゼルガディスさんは私の顔を見て渋い表情をしました。??どうしてでしょう。私は弱くも無いんですけれど…。

「まぁいい。とりあえず、心の準備だけはしておけ」

 洞窟の中に入ることに決定になったみたいです。私はこくりと頷くと、ゼルガディスさんは私の髪を撫でてくれました。
 うう、柔らかい表情なんですけど…。私、恥ずかしくてきっと真っ赤になってます。不意にそういうことしないで欲しいです。

「どうした?アメリア」

「な、なんでもないです!さ、ささっと入っちゃいましょう!」

 私は真っ赤な顔を隠すように、洞窟の中に入りました。
 洞窟の中は当たり前のように暗いです。ゼルガディスさんが光を唱えました。
 此処の洞窟はどうやら一本道のようです。
 私はゼルガディスさんに引っ込められて、ゼルガディスさんの右斜め後ろを歩くことになりました。緩やかな傾斜と、ぐにゃりと円を描くように緩やかに曲がっている道があります。それがずっと続いています。どうやら、螺旋のようでした。

「人工物のようだな」

 確かに、自然でここまで緩やかな螺旋を作ることは偶然のそのまた偶然のもっと偶然でしかありえないと思います。
 それが永遠のように長く続きます。というか同じ風景に飽きます。

「ゼルガディスさ〜ん。螺旋ループとかじゃないんですかぁ?」

「入り口に印をつけて置いた。ループならもうとっくの昔に見えているはずだ」

 さすがゼルガディスさん。隙が見えないです。

「…これ造った人、嫌がらせのように嫌な人じゃないですか…」

「ああ。偏屈な魔道士なんぞこんなもんだろう」

 どこか遠い目でゼルガディスさんはそう言いました。過去になにかあったのでしょうか?
 その間にも螺旋は続きます。
 私はずっと前のゆらゆら揺れる白を見ました。白なのに、欠点の無い白。陰影がゆらゆら。不思議な感じです。
 いつもゼルガディスさんの後ろを歩いていました。リナさんとゼルガディスさんが次の町の話をしていて、私はその後ろで景色を見て、ガウリィさんはそのまた後ろで、リナさんを見ているんです。
 二人で行動するときも、ゼルガディスさんは私を守るように前にいたり、お話するときは横にいて、きらきらゆれる針金の髪を見ていました。
 不思議な感じ。

「アメリア」

 は、と声に気がついて見上げると、どうやら螺旋が終わったようでした。
 剣の柄を握って、ゼルガディスさんは前へ出ました。
 私も後を追うと、其処は光が煌々とついていて、真ん中にテーブルが置いてありました。
 ゆっくりと近づくと、透明な半球のガラスがテーブルの上にふたのようになっており、その中には魔道書らしき本が入っているようでした。

「ゼルガディスさん」

「アメリア、離れていろ」

「でも!」

「俺の肌は岩のように固いからな。多少のことなら大丈夫だ」

 そうでも、心配なんですけれど。私は言外にそう呟き、ゼルガディスさんの言う通りに離れました。私まで怪我をしたら、対処しようがありません。
 ある程度離れたのを確認したようで、ゼルガディスさんは私のほうを一瞥してから、ゆっくりとその半球のガラスを持ち上げました。
 けれど、それは何も起こらずに、魔道書らしき本を持っても同じでした。
 大丈夫なようだったので、私はゆっくりとゼルガディスさんに近寄りました。ゼルガディスさんは渋い表情をしていました。

「どうしたんですか?」

「真っ白だ」

「え?」

 私は魔道書を覗きこみました。魔道書は真っ白でした。…真っ白な魔道書を魔道書と言って良いのでしょうか?よくわかりません…。

「なにがしたかったんだ、一体」

「確かに…」

 私も呟き、その広場を見てみましたが、それ以上行けそうな場所はありませんでした。
 いつもいつもゼルガディスさんのがっかりした表情を見るのは、…悲しいです。

「戻るぞ。此処にはなにもないようだ」

「…あの螺旋をまた永延と登るんですか」

「それを言うな、それを」

 私はげっそりしました。当たり前です。
 もう、めんどくさいこの上ないです。

 半ばやけになり登り外に出たときにはもう夜になっていました。
 結局のところ、今日は何がなんだかわかりませんでした。魔道書らしき本はゼルガディスさんが持っていることになりました。研究対象にするみたいです。
 たぶん、自分の身体に関することはないだろうな、と言っていましたが。
 あきらめちゃだめです!まだ、いっぱい可能性はありますもん!!



      >>20041129 真っ白な本は魔道書ではなく本です。



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