05 信頼
レッサーデーモンの群れに遭遇しました。気配を察した私とゼルガディスさんは互いに頷きあうと背を合わせて、呪文を唱えました。
『火炎球!』
手のひらから炎が登場し、レッサーデーモンを焼きます。
私の耳にはゼルガディスさんの定石…魔皇霊斬が聞こえてきて。私も、霊王結魔弾を唱えます。何回もかけ直さなくちゃいけないんですけど、体術を主にしている私にはぴったりな呪文なんです。
こつん、と背が触れました。
すると、私は安心して駆け出すことが出来るんです。
ゼルガディスさんは大丈夫だって。
ゼルガディスさんなら大丈夫だって。
レッサーデーモンに拳が当たっていって、灰が私の周りを舞います。
灰と断末魔が舞う世界。
私がそこに足を踏み入れた時には、強い目をしたリナさんと、柔らかな表情をするガウリィさんが私の前を歩いていました。
でも、ゼルガディスさんは、出会った頃から、ふっと後ろを向いて私を見てくれるんです。
心配するように。
自分は前に進みたいはずなのに。
灰と断末魔が舞う世界で、ゼルガディスさんはその蒼い瞳を私に少しだけいつも向けてくれました。そして、背中を。
それは、私の力を認めて信頼してくれているっていう証明で。
蒼い目も見たかったけれど、それ以上に嬉しかったことを今でも思い出します。
「霊王結魔弾」
唱えなおし、向かう時、ふとゼルガディスさんと目が合いました。
それは、心配しているような、信じているような、不思議な目の色で。
最初から変わらないゼルガディスさんの瞳が温かく感じました。
レッサーデーモンの群れは、直ぐに終わりになりました。
しかし、なんでこんなにもレッサーデーモンが繁殖しているのでしょう?
「ゼルガディスさん」
「一応、このあたりを調べてみるか?」
私の言いたいことがわかってように、そう言ってくれるので、私は甘えるように頷いてしまいました。もともと、それはゼルガディスさんの調べたいものではないのです。
私が、したいことなんです。
でも、ゼルガディスさんは分かってくれている。
それが嬉しくて。
それが少しだけ、つまらなかったりもしますけど。
でも嬉しくて。
私とゼルガディスさんは、周囲を調べました。けれど、結果はなんにもなくて。
私は首を傾げました。
「次の街で聞き込みするしかないみたいだな。前の街ではなにも言っていなかっただろう?」
「はい、…有難う御座います」
「いつものことだろう?」
ゼルガディスさんは微笑んでくれます。
それが嬉しくて。
私は、一歩下がって暖かな背中を見ます。寒くないですよ!石だからって。違うんです。暖かくて、私はほっとします。
それは私を信頼してくれている証で。
それは私が信頼している証なんです。
>>20041208
小説2部開始程度の時間軸。
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