08 男の部屋
実際問題、アメリアは俺を男だと思っているのかはなはだ疑問である。
お風呂に入った後、魔道書の解読をしている俺の部屋に乱入しては邪魔するように俺に話し掛けてくる。それ自身は決して嫌なものではない。もちろん、自分の知識を詰め込む時間を乱入されるのが他の人間であれば、俺はたたき出していただろう。
けれど、アメリアが俺のそばにいて、笑っていて、話してくれているのであれば、それは魔道書を解読するよりも有益なことだと思う。
そう、思えるようになったのは、あの極悪魔道士とくらげ頭剣士、そしてアメリアと旅をしてからだと思う。それがなければ、俺はレゾの遺産を引きずったまま、ずっと他人を拒絶し続けたに違いない。
それは今でも思うこと。
だが、しかし…。
「いつも来るのは構わないが、寝るな」
ベッドの上ですやすやと眠っているアメリアは無防備なのか、俺を男と認識していないのか。
どちらにしろ、イライラする。
相反する感情。彼女は国の皇女で、俺は犯罪者の合成獣で。
アメリアが俺に好意を持っているのかは俺には分からないが、俺は、アメリアに好意を持っている。女性として好きなんだろう、と言われれば、「ああ」と簡単に答えられる。…もちろん、そこには照れとかが含まれていて、もちろん彼女の前では言えるわけがない。
それは、アメリアにとって負担でしかないから。
ただの、旅の仲間。
たぶん、それが俺にとってもアメリアにとっても一番いい方法なんだと思う。
俺は、アメリアの前では、男≠見せてはいけないのだ。
いつものように眠っているアメリアに俺はため息をついた。
「そんな風に眠っていたら、風邪引くぞ」
ため息をついて、アメリアの身体を抱き寄せると、上布団をかけて、暖かくさせる。
ふと、柔らかそうな唇が目に入ってくる。
…いけない。アメリアに女を感じてはいけないのに。
それを、アメリアに押し付けてもたぶん、対処できないだろう。
だから、俺は抑えなければいけない。
彼女が無防備に男の部屋に夜に入ってきて、疲れたように眠ってしまっても。あいつを普通の女と一緒にしてはいけないから。
彼女を、俺が汚してはいけないから。
「…今日も徹夜になりそうだな」
俺は呟いた。元々、解読したい本があったし、徹夜するつもりだったけれど、アメリアの存在でもっと徹夜する状況が出来た。
そんなことなどまったくわかっていないアメリアは幸せそうにすやすやと眠っている。
そんなアメリアが憎らしくて、柔らかそうな唇に俺の唇を合わせた。
男の部屋に来たんだから、これぐらい覚悟していても当然だろう?
>>20050101
寝こみを襲っちゃいかんよ?ゼルガディスさん。
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