09 森




 徐々にセイルーンへ近づきつつあります。けど、ここから街までは直ぐにいけないくて、結局野宿することになりました。
 ううう、私、野宿はあんまり好きじゃないです。だってお風呂に入れないし、ふかふかのベッドで眠ることだってできないんですよぉぉ。しかも、いつ野生動物や下手したら低魔族のレッサ―デーモンとかが出てくるのか分からないんですよ。安眠も出来たものじゃないです。よく、こんなところにアジトを立てようとする盗賊さんたちの気持ちが分かりませんっ!
 ざわざわ、と木々が揺れました。
 朝は青々とした葉っぱが綺麗なんですけど、夜は葉っぱが黒くて気味悪いですぅ。
 ぱちぱち、と音がして、火も揺れました。その向かい側にはゼルガディスさんがいます。

「なに百面相しているんだ?」

「な、なんでもないですっ!」

 こんなところで、揺れる木々が怖いなんていったら、またお子様だって言われて笑われちゃいますっ!!ゼルガディスさんったら、いっつも私のことお子様扱いして…。ぶぅぅぅっ、です。
 と、そのとき、ゼルガディスさんが空を見ました。と、浮遊を唱えて上へ行きます。

「…煙が見える。すぐ近くのようだから行ってみるが、アメリアはここで待っていてくれ」

「ええ〜!?私も行きますっ!」

 私はすぐに文句を言いました。
 だって、ゼルガディスさんったらいっつも私のこと子ども扱いして危ないことをさせないようにするんですよ?私だって、ゼルガディスさんと一緒に崩霊裂だって唱えられるし、回復要員としては復活も唱えられるんですからね!それに、体術だって出来ますし、身体の頑丈さだったら誰にも負けない自信もあります!

「もう一回、テントを張りなおすのか?今日は雨も降りそうだから、これからまたテントを閉じてなにもなく、寝袋だけで寝たら朝には二人とも水浸しだろうな」

「…ううううっ、わかりました!此処にいます。でも、危ないことだったらすぐにこっちにきてくださいね!私も加勢しますから!」

「分かってる」

 ゼルガディスさんはそう言って微笑むと、飛んでいってしまいました。
 うううう、絶対に卑怯です!ゼルガディスさんはいっつも私を言いくるめる術を持っているんですから!確かにただ私たちと同じ旅人だったらもう1回テントを張りなおすなんて重労働する気さえ起きなくなりますけど…。
 私はすとん、と座って火を見ました。
 ゆらゆら揺れています。
 まるで、私の気持ちみたい。
 本当は、お城なんて姉さんみたいに放っておいて、ゼルガディスさんとずっと旅をしたいです。
 でも、それはゼルガディスさんが本当に望んでいることじゃない。ゼルガディスさんは、ゼルガディスさんの仕事をしに行くだけなんだもの。過去の呪縛を断ち切るという…。

 声が聞こえたような気がしました。

 私は立ち上がって、木々を見ました。
 暗闇のように黒い木々は私をじぃっと見ているような気がしました。

『あそこで小さな子が泣いているよ』

  『かわいそうにねぇ、はぐれてしまったのさ』

 『時空の狭間から』

   『近すぎたのさ』

     『そうさ、近すぎたのさ』

  『あの方に』

『あの方に』

 『あの方に』

 私は、声に引きずられるように歩きました。
 少し歩くと、周りの木より大きな木の根元にじぃっと見ないと分からないほど小さな人がいました。その人に近づくと、その子は小さな女の子でした。
 不思議なのは全部真っ黒なんです。髪の毛、目、服、…暗闇の所為か肌の色さえも黒く見えます。

「どうしたんですか?」

 そういうと、小さな女の子は大きな瞳を私に向けました。

「グローリィの片割れ…」

 呟くとその子は私にぎゅうっと抱きつきました。…グローリィって誰でしょう?女の子のお母さんの名前かな??
 私は訳もわからずに、その子を抱きしめると、その子は涙を止めて、私と少しだけ、お話できる距離まで離れました。

「小さな糸、貴方が持っていてくれたんですね、アメリアさん」

「糸?…それより、どうして私の名前を?」

 私は訳がわからなくて、その女の子に聞きました。女の子はにっこりと笑いました。
 何故だか、フィリアさんを思い出しました。フィリアさんは金色のまったく真逆にいるはずなのに。

「私は父様の忠告を聞いても負けて、あの方に飲み込まれてしまったんです。私は私たちになりました。そして、貴方の未来が私を探してくれているんです。貴方が糸を持っていてくれたから、グローリィは私を見つけることが出来る。…森さん、有難う」

 ざわざわとざわめいた木々はまるで、その女の子の声に答えるようでした。
 私にはその意味がわからなくて、女の子を見ました。女の子は木々の黒さに飲み込まれそうで、でも、きちんとそのままいました。漆黒のような黒さで。

「ああ、時空が、グローリィが私を見つけてくれた。…アメリアさん、離れていて」

 言われるままに離れると、空間から白い手が伸びて、真っ黒なその女の子の手を掴みました。

「ああ、父が…いいえ、ゼロスさんがいらっしゃると思いますが、こう言っていてください『それは秘密です』と」

 黒い女の子はそういうと、その手に引っ張られるように空間の中に飲み込まれて、残ったのは真っ黒な森だけでした。
 私が首をひねっていると女の子の言ったとおりにゼロスさんが来ました。

「あ、アメリアさん、ここに僕とまったく同じ魔力、気配を持ったものを感じたのですが、何か居ましたか?!」

 木々がざわめいています。
 まるで、女の子の言ったとおりに言えと。
 だから、私は笑ってこう言ったんです。

「それは秘密です」



      >>20050105 隠しキャラです。



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