12 治癒
それは偶然だった。別にリナに教えてもらっても構わなかった。が、あれはあくが強すぎる。
「ゼルガディスさん!いくら、体が硬いからって、治癒の一つでも覚えたほうがいいですよ!!」
合成獣の身になった後で身に付けた魔法はどれも、攻撃主体だった。もとより、この頑丈な身体には回復呪文なんてそうそう必要になるはずもない。
それに、回復呪文が必要になる敵に会う確率すら少ない。
そして、あの時は…レゾの狂剣士と呼ばれたあの頃は、自分の身など幾ら傷ついても良かった。ただ、レゾに歯向かうことしか考えていなかった。
偶然が偶然を呼び、レゾは生きることしか考えていない、むちゃくちゃな娘に倒される訳だけれども。
けれども、状況は変わった。
リナと付き合うようになってから、負傷率が多くなった。
リナは旦那の怪我を治癒する。…もちろん、それは旦那が魔法を出来ないという理由からだったが。そして、俺は必然的にアメリアに治癒を受けることになったわけだが。
最初にそれを言った時に驚かれた。
「ええ〜〜っっ!!ゼルガディスさん、崩霊裂も使えるのに、基本的な治癒は使えないんですか??」
「…必然性を感じなかったのでな」
さらりとそう言うと次にアメリアは怒った。
「なに言ってるんですか!!ゼルガディスさん!治癒は大切ですよ!仕組みは教えますから、覚えてください!もし、私やリナさんが居なくなったらどうするつもりなんですか!!」
「…薬草でも使えば治るだろ」
「駄目です!生を全うするのはすなわち正義!そんな考えでは悪に染まっちゃいます!!っていうことで、覚えましょう!!」
何故か、押し切られる形で、治癒を教えてもらうことになった。
もちろん、魔法理論は崩霊裂に比べればたやすいもので。
一応、巫女姫殿、ということもあり、きっちりと白魔法のことを教えてもらった。…ただ、苦手な分野だということは十二分に分かったのだが。
それに、教えてもらうたびに、正義とは何たるかを何故か、治癒を教えてもらう時間よりも長く訴えかけられた。…ある意味で、リナにびしびし教えてもらったほうが楽だったかもしれん。
しかし、アメリアは決して合成獣だから、とかそういうのは考えずに俺の身だけを心配して、治癒を覚えることを強く勧めた。
合成獣だから、傷つくことは少ないのに。
合成獣だから頑丈なのに。
…普通の奴らならそう思うだろうに。
この娘は、俺を普通の人間と同じように扱う。
…いや、この3人は、か。
不思議な気分になる。
レゾの狂剣士と呼ばれたときには、ただ、レゾへの憎悪だけが残って。
それが思ってもみない形で終わった時は、この身体への憎しみだけに歩いてきたのに。
この娘の笑顔はなんなのだろうか。
そう、随分触れることのなかったもの。
「これで、ゼルガディスさんも治癒を唱えられますね!」
「ああ。お前に迷惑かけることも少なくなりそうだ」
そう言うと、アメリアは顔を真っ赤にした。
その意図は分からなかったが。
「でも、復活の時はいつでも、このアメリアが惜しみなくかけますからね!!」
びしぃっとVサインを向けられる。
俺は、それを見て、ふ、と笑った。
「ああ、よろしく頼む」
>>20050126
ゼルアメ好きが原作にお辞儀をした瞬間(違)。
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