17 足音
暗闇の中を歩いていました。
何故そんな状況になったかと言うと…ひっじょーに間抜けなのですが、ゼルガディスさんが図書館に行くというのでわたしは町の中でもやけに高い鐘が備え付けられている塔に向かって一直線に走っていったんです。浮遊でも使えばいいと思われるかもしれませんが、わたしはとにかく走っていきたかったんです。
そうして、到着しててっぺんまで登って気分がすっきりしたとき…帰り道が分からなくなったんです。
ううう、目印でもつけとけば良かった…。
そんなこんなで迷いながら歩いているうちに日が暮れて、遂には夜になってしまった訳です。
しかも、どうやら人通りの少ないところを歩いているみたいで誰も見当たりません。
あうあう、ゼルガディスさんに怒られます〜。
ざっざっざ。
突然、砂を蹴るような足音が聞こえてきました。
うわ〜ん、お化けとかだったらどうしましょう!?わたし、お化けは苦手なんですぅぅぅっっ!
わたしは思わず駆け出していました。
ざっざっざっざっざ。
更に音は激しくなっていて、わたしは泣き出しそうになりました。
でも、待ってください。
そういえば、お化けに足があるわけがありません!ぜんっぜん気が付きませんでしたっ。
と、言う事はわたしを付けねらった追いはぎとか強盗とかそんな悪人さんですか?
だったら、成敗せねばなりません!!
わたしは急に立ち止まるとばっと指を指しました。
「…正義の使者アメリア=ウィル=テスラ=セイルーンに強盗を働こうだなんて大胆不敵な悪人さんもいたものですねっ!?しかーぁし!そんな輩は返り討ちにして差し上げます!!」
…は、しまったぁぁぁぁっっ!
高いところによじ登るのをすっかりと忘れてましたっ。正義の使者は高いところからかっこよくくるくるくる、と飛び降りなくちゃいけないのに!
ともかく、とわたしは足音を立てていた主を見ました。
きらきらと煌く銀色の髪月の光に煌いて、その頬には岩人形と合成したであろう岩痕が…って!
「ゼルガディスさんじゃないですか、どうしたんですか?…はっ、もしかしてとうとう悪の手に染まったのですか!駄目ですよ、このアメリアがきっちりと正義の素晴らしさを耳元で語って正気に戻してあげます!」
ゼルガディスさんはびぃっと人差し指をつきたてるわたしを見て、はぁとため息をつきました。
むぅぅぅっ、人がせっかくまっとうな道への指針になってあげようと提案したのに!
「あのなぁ、お前がいつまでたっても帰ってこないから、探しに来たんだが?」
う?もしかして、勘違いって奴でしょうか?
わたしは瞬時にそれを確認するとわたわたと慌てふためいてゼルガディスさんを見ました。
「ああああ、ごめんなさい!わたしったらついつい…」
「まぁ、お前の猪突猛進なところは分かっているが。ともかく、帰るぞ」
そう言って、ゼルガディスさんはわたしを促しました。
わたしはそれにつられる様にとぼとぼと歩いていきます。
その砂を蹴るような足音は、先ほどと違いわたしをほっとさせるものでした。
>>20050914
近づいてくる人によって音は幸福にも恐怖にもなる。
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