正しかった事もありました。
 間違っている事もありました。
 わたしはそんなことを繰り返しながら、
 ただ神にすがるだけでは駄目なのだと悟りました。
 けれど、わたしは神に祈るです。
 全てに平穏なる心を、と。




      正義と云う名の盲目




 わたしはこの国を治める、永遠の女王に謁見した。

「顔をお上げなさい、聖女アメリア=ヘーメラー」

 そう言われて、顔を上げると永遠の女王はにっこりと微笑んでくださった。

「わが国への侵略行為の中心人物である貴方を受け入れることは、様々な意見がありました」

 それは、なんとなく予想が出来た。
 わたしはそれだけこの国の人々に…いいえ、侵略行為をした各国やセイルーンの民に対してひどい事を行ってきたのだ。
 それは、許されるべきことではない。

「けれど、アメリア。貴方は五聖ゼルガディス=グレイワーズを始め自国の民を助けてくださったと、そう報告を受けています。貴方は優しい方。ですから、永遠の女王の名のもとに貴方を民として受け入れましょう」

「有難う御座います、永遠の女王様。しかし、どうかもう聖女ともヘーメラーとも言わないで下さい。わたしはセイルーンを出たときからもう、聖女でも洗礼名のヘーメラーでもありません。わたしは父から授かった名…アメリア=ウィル=テスラ=セイルーンとなりました。ですからこれからは、そうお呼びになってください」

 そう言うと、永遠の女王はにっこりと微笑まれた。

「分かりました、アメリア=ウィル=テスラ=セイルーン。ようこそ、わが国ゼフィーリアへ」

 そうして、わたしはセイルーン国を知る人として王宮へと迎え入れられた。
 と、その時に大きな声で兵士が叫んだ。

「セイルーン国の教皇ゼロスが亡くなった!!」

 その言葉に驚いて、わたしは走っていた。
 もしかしたらフィリアさんのしたかったことってゼロスさんを止めることだったんじゃないか、と思ったからだった。
 しかし、其処にいたのは青い髪をポニーテールにしている女性…五聖のうちの1人、ミリーナさんだった。

「ああ、アメリアさんね。ちょっとこっちに…」

「あ、はい」

 そうして呼ばれたのは会議室の一角で、五聖の皆さんが揃っている非常に豪華なものでわたしはミリーナさんの隣に腰掛けた。
 ミリーナさんの話とは、やはり教皇ゼロスさんの死亡のことだった。
 ミリーナさんは何一つ表情を変えないで、言った。

「教皇ゼロスは神の間で聖女アメリア救出の混乱時にフィリア=ウル=コプトによって刺殺されました。フィリアも刺殺されており、状況から見て相打ちになった模様です」

 やはりフィリアさんが…。
 でも、生きてゼフィーリアで会いましょうって言ったのに…。

「アメリア…」

 ゼルガディスさんが心配そうにわたしを見ていたが、わたしは微笑んだ。
 大丈夫。

「良かった。フィリアさんは最後まで神のご意志に背くことは無かった。ゼロスさんに好意を寄せていたフィリアさんは彼を刺して自分も死ぬ、といったようなことをしなかったのですね。やることが終わったらゼフィーリアに来てくれるって、フィリアさんは言ってくれました。きっと、死ぬ気なんて全然なかったと思います。だから、わたしはいいんです。とっても親しい人が死んでしまうのは悲しいことですが、それでもフィリアさんは自分の意思を貫き通したんですから」


 こうして、教皇が権力を握っていたセイルーン国の情勢はガラリ、と変わった。
 今まで幽閉されていた国王が再度頂点へと登り咲き、そしてセイルーンを立て直すためにゼフィーリアに侵攻するのを止め、逆に条約を結んで友好国となった。
 占領していた他国は平等なる条件をつけ解散させ、一番最初の領地だけになったセイルーンは今後、神聖スィーフィードの元に復興をしていくのだろう。
 永遠の女王の慈悲により、わたしは王宮で勤めることになりゼルガディスさんと共にベランダにいた。
 そこは民衆と国の全てが見渡せる場所。
 ゼルガディスさんは前を見たまま言った。

「親父さんのもとへ戻らなくて良かったのか?」

 わたしは、微笑んでゼルガディスさんを見た。
 ゼルガディスさんはやっぱり表情を変えずに前を見たままだった。

「ええ。状況ゆえにしかたなくでしたけれど国を捨てたことは事実です。のこのこと国に帰ったことにより、国王である父の立場を脅かしたくはありませんし…どんな場所でも正しい行いをしていれば、神はいつでも私達を見守り助けてくださいます。だから、いいのです」

 そう言うと、ゼルガディスさんはわたしを見た。
 そうして微笑んでくれた。
 わたしが大好きな微笑みだった。純粋に微笑んでいるようなその表情。

「そうか。まぁ、俺たちもいるしな…」

 その顔は何処か赤らめていた。

「どれ、仕事だ」

「はい!!」

 わたしは、聖女といわれた頃より、幸せだった。



      >>20050323 ハッピーエンド…?



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