限りなく惨劇に近い悲劇のシナリオ避けるなら 7つだけ言う事を聞け





































7つだけ言う事を聞け もしそれができないなら・・・・・・






















闇夜の中で映るは、鮮紅の大輪。誰のと不知ぬ血潮が、今宵に狂い咲く…。






























「 4) 泣いて許しを乞え、 」






























現職家老衆の下より執権を奪い、独自の地盤固めをして。
可能な限り国内に有る権力を自身に集める為に城主時人が行ったのは、
現役職の人員整理や金銭の収出管理、家禄法度の遵守罰則だけに止まらず。
新城主に向けられた疑惑疑心の類に対しての温情混じえない一掃もそうだった。

冷酷無比な制裁には家柄新参古参の差別や隔たりなく。
沿わぬ者には例外なくを信条とし、先代城主こと対外的「父」の遺言を
歪曲に享受したのを己に了承した上で、正当の型に仕上げた粛正を与えた。

その結果、長年より国を苗床に巣食い肥えた古参の家臣のほとんどが
忠義と忠信の意無しとされて。反骨の相あり、の一言のみで斬首された。
当然ながら生き残った人は、瞬くと訪れた恐怖政治に震えて怯える。
今日明日・・・否、今時後から何時の間に、必罰の死が降りかかるか、と。

孤立して黙せば忠臣の態が見えぬと、無言に斬り打ち棄てられる。
気が許せた者と会い語らえば下克上の兆しありと生き埋めにされた。
新城主たる時人の目に一瞬でも、その態が異常異様に映れば
振り下ろされた刀の一陣の風圧に気付かぬ内に、人が死に体と化す。

それは、事態が過ぎれば過ぎる程、時が経てば経つ程に明確に、
滴った雨水が染みをつくり、濃い色に滲んでいく様に見えていった。





その中で、アキラは確実に地位を上げていった。





それだけ時人にとって、家臣アキラの存在が駒として都合が良く。
意思も恣意も通じて、命令をこなせる、互いにの利害を分かり合った
アキラの存在が手放せないモノになるのは、時人の周囲から人間が減れば
遣える者が居なくなればなるほどに重要性が増していくのは、至極当然だった。







須く・・・・・アキラの思惑の通りに、万事は滞りなく進んでいて…―――、







時人が城入りしてから、運命の半年が経っていた。






























限りなく惨劇に近い悲劇のシナリオ避けるなら 7つだけ言う事を聞け もしそれができないなら・・・・・・





























思えば、上手く行き過ぎていた。何もかもが、完璧に。

単純に考えれば、構図も構想も全てが何処までも簡潔だった。
だから目指すものが何かなんて分かりきっていたし。その簡潔さは
物事の発端から・・・・つまりはボクが本物の後継者ではないなんて、
誰の目に見ても明らかだったし。ボクもその点に於いては「そうだろう」と
分かりきった事をいちいち言ってたって、だから何だっていうのさ?って感じ。

言い切っちゃえば、ボクは「御落胤」との名乗りは上げたけど、
真実かどうかの保証までしていなかったから。最終的に為りきれば
そこまでが結末で、権力を手中にしたボクの勝ちだと思っていた。

ねぇ、だから予定に無かったんだよ?君の存在、なんて云うモノは。






「 4) 泣いて許しを乞え、 」






中秋の名月なんて季語は、所詮は貴族の謳い言葉だと。
臍の曲がった事ばかりしか言えないボクは、何時もだけど
その晩の君の顔(かんばせ)といったら、まるで魔通う者にでも
魅入られたんじゃないかと思うような凄みがあった。まさに凄絶。
何だってそんな雰囲気なのか、と。問い質したい気持ちが半分。
でも見過ごした事にして、またの明日を何気なく迎えたいのに半分。

通常だったら、冷徹な様に見せてその実で熱情的なアキラを構い倒して
無駄に煩がられて貶されるのがボクらのやり取りの一部になっていたのに、
どういった訳か今夜のボクは、アキラのどんな言葉も想いも、思考の何もかもを
一切も受容したくなかった。屹度、ろくな事にならないと、判断したから。

闇夜自体は稀なことじゃないし、決してボクらの関係は安穏とした
所謂、知り合えた仲とか、分かり合えた関係とか、割り切ったものじゃなく
未だにボクは、自身の本性を。ボクの正体を明かした訳じゃなかったし。


だから逃げるように、城内に設けられた自室に逃げ込む事だけを考えて
月明かりも蛍火も無い闇夜の中を、蝋燭の細い焔に縋りやや怯え気に。
日頃と変わらず、付き従って。態度はあくまで謙譲的なアキラの姿だけど
奇妙な事に今夜だけは、全面から避けて。独り篭りたいと思っていた。

其の気配が、アキラの覚られたとは一遍も思わずに。・・・・・。



「今日は、此れまでで良いよ。ご苦労様? もう退けて良いから。」



頭を垂れて、両の手と額を床に付けて。従順としている様に変化はない。
やはり思い過ごしだったのかな、と。内心で安堵の溜息を吐いたのは本当だ。

ボクが掛けた言葉に反応してから・・・・の様に、アキラはその顔をゆらりと上げる。
光源は、アキラが手元に置いた手燭台の頂に燈る焔しかないっていうのに、
橙に瞬く灯りは、少しだけ上げたアキラの顔にじゃなくて、前髪がかかって
影になっている筈の眼球に、蒼穹を嵌め込んだ真球の硝子に異様に映えていた。



「一つだけ、私はアナタに御礼を差し上げたいと、思うておりました。」



視線は絶対に、ボクより下にある。言葉遣いだって決して無礼じゃない。
だけど態度だけは、遙かなる天空の下に降り立った支配者の尊大さを。
発せられる言葉の数が増える程に口角が上がり、黒闇の中で美麗に輝く
滾り湛えたる欲望が、濡れて見える双眸に―――。ボクは息を呑む。



「どうも、今宵まで“代わり”と言えど、目晦ましになって頂きまして・・・・」



嫣然と微笑むアキラの貌は、ぞくりとする程に美しかった。



「これでやっと亡き父母の希望に副うことが出来ました。有難う御座いました、時人。」





腕を、掴まれたと―――――・・・・思った瞬間には、
翳りに彩られたアキラの全てに、劣情が刺激された。



自分が、絶体絶命だってのに。そそられる、と。










自覚した時は、何もかもが終わっていて。惨劇は始まっていた。


そして、ボクの正体が。偽り続けた性別が、他者に暴露(あばか)れた夜。
狂わんばかり甘く苦しい快楽に貫き堕とされた。悲劇の闇夜から、ボクは縛られた。



「アナタは、女性だったのですね? 時人・・・・、貴女は、」



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