血色そして焔色




 朝、あくびをしながら食堂へ入ろうと扉へ手を掛けたとき、宿屋の主人に話しかけられた。

「お客さん、リナ=インバースさんだよね? ガブリエフさんから伝言を頼まれたんだけど」

 ガブリエフと聞くと、咄嗟にガウリィを思い出したがこの場合妥当なのはクラウディさんのほうだろう。
 朝はさほど強くないあたしは、半目のまま宿屋の主人を見た。
 聞く体制をとったものだと思われたのか、主人は話を続けた。

「"午前十時頃、北側郊外の草原の中心にある大きな木の下に来てください。貴方が求む人がお待ちしておりますので"……だそうだよ。こう伝えれば、分かると言っていたんだが」

 その言葉に、脳細胞が急激に活性化していくのが分かる。
 手札がそろう前に、と早くに打って出たのか。

「ありがと、おっちゃん」

 あたしは片手を上げて礼を述べると食堂へ行き、空いている席にすとんと座ると朝食のメニューを上から順に五人前ずつ頼み、ゼルたちが来るのを待った。
 といっても、食堂へ来る時間の誤差などさほどなくて、頼んだメニューが届く前には二人同時に来たのだが。
 とりあえず体を本格起動させるために、食事をきっちり取った後思い出したようにクラウディさんからの伝言を伝えた。

「ゼル、アメリア。あたしちょっくらガウリィと闘ってくるわね」

 食後の腹休めと優雅に紅茶を飲んでいたアメリアはあたしが言葉を吐いた瞬間、反応しきれず固まっていたのだが数分の後再起動したらしく、はた迷惑な叫び声をあげた。

「ええ〜! 昨日の今日でもう行くんですかっ?」

「あっちの指名でね。手数増やされる前に、あたしを叩くつもりなんじゃないの? ガウリィの能力値がどうなってるかしんないけど、あたしの知っているガウリィの能力のまま戦われたんじゃあ、ちょっと厳しいしね」

 まぁ、ガウリィが剣の腕を発揮する前に魔法を当てればおしまいなんだけど。
 でもガウリィは剣術が超一流なのは勿論だけれど、軽戦士ライト・ファイターなだけあってスピードもそこそこある。距離を取り、高位呪文の詠唱を終わらせるよりも先に攻撃できるぐらいには。
 その点を考えれば、あたしの圧勝にはならないだろう。
 ゼルもその点を考えていたのか、顔を上げあたしを見た。

「俺もついていこうか?」

 王子に会うだけならば、アメリアだけでも十分だしな。と付け足し、ゼルはあたしの判断を待つ。
 でも、あたしはもう決めている。

「いや、ゼルはアメリアのフォローに付いて。昨日も言ったけど、あの子だけじゃあ本題からそれるだろうから。正義という言葉だけでのこのこついて来るのはセイルーン王家だけだろうし」

 というか、アメリアとフィルさんだけだろうけど。

「それもそうだが、アンタだけで旦那相手に持つか?」

「持たせるわよ。っていうか圧勝するつもりだけど、一つだけ」

 軽口を叩きながら、あたしは預かったままの隔幻話効果がある珠を見せた。

「これ、通話状態にさせておくわ。ただ、ガウリィと戦闘が始まったら意識を集中しざる得ないから回線を切るつもりだから、通話が切れたらゼルだけでもいいからこっちに向かってくんない?」

「それぐらいだったら容易いことだ」

「もちろんですっ! 例え王子に呼び止められたとしても、ゼルガディスさんだけでも行ってもらうので安心してくださいっ」

 快諾する二人に、じゃあよろしくねと再度頼むと彼らを見送り、その後時間を見て指定された場所へ行くことにした。



      >>20071101 話の構成って難しいなー。



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