結局共同作業で朝食を作り上げ(私は主にレオンの助手的役割を行った。器用なおかげで初めて持った包丁でも様になり、そこそこ役に立ったと思う)、レオンは探し人の情報を見つけるため私は興味から時が止まってしまった原因を突き止めるため、一緒に街中を歩いていた。
 別行動でも良かったのだが、前回レッサーデーモンに囲まれたこともあり用心に用心を重ねた結果である。街中で大呪文放つわけにはいかないし。
 しかし、人が止まってしまっているため聞き込みは不可能である。
 ゆえに少々心が痛い気もするが、一軒一軒入り中にあるノートやら日記やらなんでもいいのだが物的証拠を探すことになった。
 小さな街とはいえ、日記をつけていない人が一人も居ないということはないだろう。
 逆に小さな街だからこそ小さな変化には敏感になるだろうし。
 その辺りはレオンと意見が合い、火事場泥棒みたいな真似をすることになったのである。――もちろん、盗むようなことはしないが。
 一軒一軒丁寧に探し、ノートがおいてありそうな場所を漁る。が、これといってめぼしいものを見つけることが出来ない。
 小さな街とはいえ、そこそこに軒数があるし丁寧に物を探し時には机の鍵すらも探すのは神経を使うため、半分ぐらい回ったぐらいでぐったりと疲れた。

「あー、もうっ! もうちょっと事件の情報を残しておくっていうのが推理小説の原則でしょうが!」

「推理小説じゃねぇし、推理小説にすらならんだろうこんな力技な事件」

 私は昨日レッサーデーモンに襲われた井戸に寄りかかり、苛立った声を上げる。
 ……そんな私の声にすら冷静なツッコミを入れるレオンが腹立たしい。戸惑ってみせるとか慰めてみせるとかすれば多少は可愛げがあるっていうのに。

「それにしても、この町はなんでこんな力技みたいなことが起こったのかしら」

「それを調べているんだろうが」

「そうだけど! あんまし事前調査してこなかったから、この町の特色とか独特の宗教とか独特の儀式とかあったのかわかんないのよ」

 あんまりにもアホかみたいな顔でツッコミを入れられたので、思わず声を荒げながら言った。……いや、私はさっきから声を荒げていたんだけど。
 それにしたって、可憐が乙女が疲れて苛立っているって分かってんだから、わざわざ人の神経逆なでるような言い方しなくたっていいと思うのだが。――傭兵ってやつはそういうデリケートな問題がわかんないのかしら。
 ともかく私の言葉の意図が分かったらしく、レオンは呆れたように肩を竦めた。

「そんなことも調べずに来たのか? 迂闊にもほどがあるだろ」

「何よ! じゃあ、アンタは調べてきたって言うのっ?」

「……この町は森に囲まれているせいか、町というよりは農村に近い。基本的に自給自足で暮らしており他の町への貿易は自分達が食べきれない分の農作物を卸したり、この土地では取れない農作物を入荷したりするぐらいだ。村独特の行事としては食べ物が取れたことへの感謝を赤の竜神フレア・ドラゴンに示す祭りぐらいだな。信仰に関しても赤の竜神以外の神を祭ったりとかはないようだし、まぁ一般的な町だ。この町ぐるみで大掛かりなことをするような理由も事情も習慣もないようだった」

 呆れたという目で私を見ながらレオンはすらすらっとこの町についての特色を述べた。
 だから、可愛げが足りないっていうのよね。

「はいはい、ちゃんと調べなかった私が悪うございました」

 パタパタと手を振って、簡単に謝るとふんっと鼻を鳴らして私に背を向けた。

「休憩時間も終わりだ。少しばかり運動しなけりゃいけないようだしな」

「この井戸呪われてんのかしら? なんか呪縛霊が黒髪垂らして這いずってきたりしないでしょうね」

「さぁな」

 軽口を叩きながら寄りかかった体を井戸から離し、呪文を唱える体制に入る。
 すると影から踊り出た魔族と呼ぶには中途半端すぎる生物――レッサーデーモンが一斉に襲い掛かってくる。
 私は刹那、力ある言葉を解き放った。

「烈閃槍!」

 青白い光はレッサーデーモンの体を貫き混沌へ導く。
 後ろのほうではざしゅっとレッサーデーモンを切り裂く音が聞こえた。魔皇霊斬アストラル・ヴァインを唱えた音も聞こえなかったので、あの剣は魔剣か何かなのだろう。レッサーデーモンだって人間ごときにぽこぽこ召喚されるとはいえ魔族と銘打つ輩なのだ。魔道士ならばさくっと倒せるが、たかが剣士が扱う魔力の付加もない剣であればかなり苦戦する。それがないということは――つまり、剣自体に魔力が付加されているという事だ。
 まぁ、その辺りの追求はこの戦いが終わってから暇を見てしてみよう。
 そう思いながら、レッサーデーモンの攻撃を器用に避けながら私は次の呪文を唱えた。

青魔烈弾波ブラム・ブレイザーっ」

 青白い光はレッサーデーモンを直線に貫き、後ろにいたレッサーデーモンをも貫通する。
 一気に三匹ほど倒したが、それでもまだ十数匹ほど残っていた。
 その様子に私は思わず溜息を吐く。

「どうしてこう、ぽこぽこと湧いて出るのかしら?」

「さぁなっ! それよりもこいつらを一掃することに集中しろ!」

「それもそうだけどっ」

 軽口をたたきながら、襲ってくるレッサーデーモンに手をかざし引き金を引く。

「烈閃槍っ」

 流石に町の中心部で大技を使う気にはなれなかったので、そんな小技ばかりを使いながらレッサーデーモンを一掃した。
 亜魔族だけあって、死体が出ないのが唯一のいいところかもしんない。
 一掃すると、私は荒くなった息を収めるために大きく息を吐いた。

「あー、しんどい。今日のところはもう引き上げましょ」

 そう提案すると、レオンは眉を顰めたが了承するようにかきんと剣を鞘へ収めた。

「ぼちぼち日が落ちてくるだろうし、まぁいいだろう。明日は今日よりも早めに出るぞ」

「しょうがないわね」

 私は肩をすくめつつ、レオンの提案を了承した。



      >>20100422 クリア後なので、魔法の豊富さはリナをしのぎます。



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